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第一章 個人設定

禍福は糾える縄の如し
--- 史記‐南越伝


時代劇のキャラクター達はみな個性にあふれ、それが時代劇大きな魅力の一つになっています。

そのような個性的なキャラクターをつくれるように、「秘伝の声」 の個人設定(キャラクター作成)は工夫が凝らしてあります。この個人設定ルールでは、だれでも時代劇にふさわしいキャラクターを思い通りに作ることができるのです。

この章では、個人設定の手順と、キャラクターの経歴や転職などについて詳しく解説します。

個人設定はRPGを遊ぶための第一歩です。あなたも本格時代劇RPGの世界へと踏み出してください!

一ノ一 キャラクターのイメージ

まず、自分が演じたいキャラクターをイメージすることから始めましょう。

選択できる職業は実にたくさんあります。ただし、シナリオや他のキャラクターとの兼ね合いで、GMから選ぶことができる職業を指定されるかもしれません。他のプレイヤーとよく相談して、自分のキャラクターをイメージしてみてください。この時点ではある程度漠然としたものでかまいません。「今日は武士のキャラクターで、刀を片手に大暴れしたいな」「奉公人になって、いつか店持ちになることを夢見るんだ」といった程度で良いのです。

個人設定はそのイメージを具体化し、さらに膨らませていく作業なのです。

一ノ二 年齢、性別の決定

イメージに合わせて、キャラクターの年齢、性別を決めます。 年齢は満年齢ではなく、数え年です。数え年は、生まれた時を1歳と数え、以後、新年を迎えるたびに一つ歳をとります。また、年齢はキャラクターポイントを算出する上での基本の値になります。

なお、年齢は、かならず10歳以上、100歳以下にしてください。また後で説明しますが、江戸時代の平均寿命は50歳程度と、現在から見るとかなり短かったことに注意して年齢を決めてください。

あとで職業を選択するときに、年齢と性別によっては、選択できないものもあります。自分のキャラクターですから、よりよいゲーム内人生を送ることができるように、 決めてください。

一ノ三 キャラクターポイントの算出

キャラクターポイント (以下CP) とは、 個人設定で、個々のキャラクターがどれだけ有利な特徴、 特技を得ることができるかを表す数値です。

CPの初期値は次の式で算出します。

CP の初期値 = 年齢 + 一定値
ただし「一定値」は次を目安として、GMがプレイしたいスタイル、シナリオのバランスなどを考慮して適切に決めてください。全員が同じである必要はありません。

   0 = 一般人のレベル

+ 30 = PCとして普通のレベル

+ 50 = 大物レベル

+100 = (一般的な)主人公レベル

+200 = 超人レベル

はじめは、全員 +30 として始め、ゲームマスター・プレイヤーともに慣れてきたら いろいろなバリエーションを楽しんでみるとよいでしょう。

キャラクターはCPを消費することで、能力値、特徴、性格、特技を「買う」ことができます。 逆に、キャラクターにとって不利な特徴や性格をとったり、能力値をマイナスにすることで、CPを増やすこともできます。 プレイ終了後に支払われる経験値としての役割もCPにはあります。 これらは、それぞれの説明のところで詳しく述べます。

個人設定時のCPの余りは、キャラクター用紙のCPの欄に書いておきます。 残ったCPは、プレイ終了時に得るCPとあわせて成長などに使うことができます。

プレイ中、あるいはキャンペーンを続けている間に、 キャラクターが歳をとったときには、 一つ歳をとるごとに1ポイントのCPを得ます。

一ノ四 能力値

能力値は、キャラクターが生まれながらに持っている能力を表すものです。 行動判定の時に、対応する技能や特技を持っていなければ、 能力値が行動判定の基準になります。 能力値は、対応できる行動すべてに使用することができます。

能力値は5種類あり、それぞれの意味は次の通りです。

腕力
キャラクターの腕っ節の強さを表します。 力仕事に関係する行動で使用する能力です。 戦闘では、防御の「受け」に関係します。
敏捷
キャラクターのバランス感覚や俊敏さを表します。 全身を使った作業で使用する能力です。 戦闘では、防御の「かわし」に関係します。
器用
キャラクターの手先の器用さを表します。 手先を使った様々な作業で使用する能力です。 戦闘では、防御の「流し」に関係します。
知恵
キャラクターの知識量や頭の回転の速さを表します。 事件解決の糸口に目星をつけたり、書物などの調べもので使用する能力です。
知覚
キャラクターの感覚の敏感さを表します。視力や聴力を使って、周囲の状況を探る能力です。

能力値の初期値はすべて0で、10ポイント消費することで1ポイント上昇します。 また、能力値を1ポイントマイナスするごとに、 CPを10ポイント得ることができます。 能力値は -5 〜 +5 の範囲に入っていなければなりません。

なお、能力値は個人設定後に変化させることも、成長させることもできません。

一ノ五 経験能力値

経験能力値は、キャラクターが事件に出会い、それを解決していくなかで、 成長していく能力のことです。経験能力値には3種類あり、それぞれの意味は次の通りです。

気合い
相手を圧倒する気の度合いです。 この値が大きいほど、戦いの場で相手を萎縮させ、自らの太刀筋が力強くなります。
精神力
相手の気を受け流す、心の落ちつきの度合いです。 この値が大きいほど、相手の動きを見切りやすくなります。
勘働き
第六感とか虫の知らせなどと呼ばれるものです。 この値が大きいほど、事件の手がかりにふと気づいたり、 不意打ちを容易にかわすことができます。五ノ七ノ五「勘働き判定」も参照してください。

経験能力値の初期値はすべて0です。 ただし、能力とは違い、マイナスになることはありません。 経験能力値はCPを10ポイント消費することで、1ポイント上昇させることができます。 また、プレイ後に得たCPを使って成長させることもできます。

一ノ六 特徴

特徴は、キャラクターの身体的な特徴や癖を具体的に表すものです。

特徴は個人設定時にのみ、選択、決定されます。 一度決定したら、変更することはできません。

特徴は、それぞれに決められた消費CPを消費することで得ることができます。 注意しなければならないのは、マイナスで書かれた消費CPの特徴を取った場合には、 結果として基本CPに消費CPの値がプラスされるということです。 たとえば、消費CP -10 の特徴を取ると、基本CPから -10 だけCPを消費したことになるので、基本CPに +10 されます。 特徴の消費CPがプラスの値のものは、 キャラクターにとって有利な特徴、マイナスのものは不利な特徴になっています。

三つまでならいくつ取ってもかまいませんし、また、一つも取らないでおく事も可能です。

プレイ中、キャラクターが何らかの身体的障害を得ることがあっても、 それによるCPの増減はありません。 特徴については、三ノ一「特徴」で詳しく述べます。

一ノ七 性格

性格はキャラクターの性格を具体的にあらわすものです。

性格の選択、取得方法や消費CPなどに関しては、特徴と同じです。

性格は最大三つまで取ることができます。 どのキャラクターも、最低一つはとらなければなりません。

プレイ中の性格の変化はごくかぎられた場合を除いて認められるべきでは ありませんが、万が一変化することがあっても、 CPが増減することはありません。

性格については、三ノ二「性格」で詳しく述べます。

一ノ八 経歴

そのキャラクターがどのような経過を経て、今の職業に至るのか? それがここでいう経歴です。 職業の中には、能力を身につけていないとつけない職業もあります。 はじめは奉公人などからはじめて、徐々に出世していくことでつくことになる職業もあります。 なんらかの状況の変化で転職しなくてはならないこともあるでしょう。

経歴はそのような、キャラクターの職業の遍歴を再現し、キャラクターに様々な技能や特技の獲得の機会を与えています。 キャラクターイメージに合わせて、ふさわしい経歴を考えていきましょう。

経歴の決定方法の概略は次の通りです。

  1. 10歳で、技能・特技がなにもない状態から始める。
  2. どの職業にどれだけついていたか決定。
  3. 技能の取得。
    1. 修行期間の割り振り。
    2. 修行ポイントの算出。
    3. レベルの決定。
  4. 特技を取得。
  5. 設定した年齢になるまで 2. から繰り返す。

手順を繰り返し、現在のキャラクターに 至るまでを決定してください。そこに至ったとき、自分のイメージにふさわしく、 またより人間味を増したキャラクターが生まれていることでしょう。

では、各項目をより細かく説明しましょう。


一ノ八ノ一 経歴の開始

経歴は、数え年で10歳から開始されます。最初は、どの特技・技能も持っていません。また、所持品なども持っていません。


一ノ八ノ二 職業の選択

経歴決定の要が、職業の選択です。

を決定してください。

職業は第二章「職業」の中から選びます。 自分のキャラクターのイメージに合う経歴を考えながら、職業を選んでください。

なお、一番初めにつく職業 (初期職業) と、転職してつく職業では、 制限が異なります。 注意してください。詳しくはのちほど 説明します。

職業には「必要条件」があります。 必要条件を満たしていない職業に、転職によってつくことはできません。 「必要条件」は、年齢や性別であることも、 技能や特技の有無やレベルの場合もあります。 必要条件を満たすための修行ができる職業を選び、それを修得した後、 希望の職業に転職してください。自分の希望を満たすためには、どのような 経歴をたどればよいか、よく考えてください。

期間は、一季節 (春夏秋冬、3ヶ月) を1として計算します。つまり1年は4期間です。 期間は、キャラクターの技能の習得に密接に関わってきます。 職業についている期間には特に決まりはありませんが、一ノ八ノ四「特技の取得」で得られる特技は、 1年間その職業についていなければ得ることはできません。

初期職業

キャラクターの最初の職業を「初期職業」と呼びます。 第二章「職業」の職業データで、 初期職業の欄が「可能」となっているものから選んでください。 初期職業の欄が「不可」となっているものはこの時点では選べません。 なんらかの職業を経た上で、希望の職業に転職するようにしてください。

また、必要条件の欄が「初期職業から継続」となっている場合は、 転職で職業につくことはできません。必ず「初期職業」として取ってください。 このような職業は、他の職業へ転職することもまれです。

職業は経歴の中で、転職によって変更してもかまいませんし、初期職業のままで もかまいません。

転職

転職に際しては、CPを10消費します。

転職はそのキャラクターにとって、大きな転機であるといえます。長い人生の中 でも、職業がかわる、ということはそう多くあることではありません。 そこにはなんらかの事情があるはずです。

たとえば、御家人が浪人へと転職するのであれば、そこにはお家の取り潰しや、 敵討ちなどの事情が考えられます。逆に、浪人が御家人になるのなら、なんらかの 形で仕官がかなったのでしょう。商人が御家人株を買って武士になることもあれば、 百姓の子が商人の家に奉公に出て、いずれ商人として独立することもあります。 女性であれば、武家へ女中として奉公して礼儀作法を身につけ、 その後結婚して女房になる、とこれも転職であるといえます。

キャラクターは、転職することによって、新たな技能を修得する機会と、 新たな特技を得ることができます。転職をしても、それまでに修得した技能、 特技はそのまま継承されます。また、一度修得した技能は、 転職後も継続して修行できます。

職業の中には、その職業につくと、二度と転職できないものがあります。虚無僧 と仕掛人がそれにあたります。この二つは、職業の性質上、決して転職できません。 また、武士以外のキャラクターが武士の職業に転職することは、 まずないといっていいでしょう。


一ノ八ノ三 技能の修得

職業についている期間は技能を修得できる期間でもあります。 その職業に示されている獲得技能を修得することができます。

技能とは、長い期間の修行を積み重ねて極めていく技術のことです。技能は職業 につくことで獲得することができます。また、それを修行できる職業についているか、 すでに修得していなければ、成長させることはできません。

逆に言えば、一度技能を修得してしまえば、その技能を獲得技能に持たない職業に ついていても継続して修行が可能であるということに注意してください。

期間の割り振り

まず、職業についている期間に、どの技能をどのくらいの期間だけ修行したのかを決めてください。

一期間で修行できる技能は一種類だけです。たとえば、御家人から転職した医者は、「医術」の修行をしている期間は、「剣術」の修行をすることはできないのです。期間が重ならなければ、この医者は医者である期間にも「剣術」の修行をすること ができます。

つまり、ある職業で修行可能な技能それぞれの修行期間の総和が、 その職業についていた 期間と同じにならなければいけないのです。

才能

キャラクターは、技能を新たに修得するに当たって、才能を決めなければなりません。 才能は、そのキャラクターがどれだけその技能を修得するのに向いているかを 表しています。才能の数値が高ければ高いほど、技能を高いレベルで早く修得する ことができます。

才能の初期値は0で、才能を1ポイント増やすごとに、10CPを消費します。

才能は、技能を新たに修得する時点で決定しなければなりません。 このとき決定した才能の値は、あとで変化することはありません。

才能の目安は次の通りです。

0人間として最低限
1一般人
3飲み込みが早い
5大器の片鱗が見られる
8天才
10不世出の天才

修行ポイントの算出

修行の期間と才能が決まったら、その期間で得た修行ポイントを算出します。修行ポイ ントは次の式で算出します。

[師匠がいる場合]
修行ポイント = (才能 + 1) × 期間 × 3
[独学の場合]
修行ポイント = (才能 + 1) × 期間 × 2

師匠は、その技能を修得する上で師となる人物のことです。剣術道場の先生や、 大工の棟梁、店の大旦那など、そのキャラクターが教えを乞う人物です。また、 師匠の代わりとして、共に修行する仲間や、好敵手、倒さねばならぬ宿敵など、技能の成長に影響を与えるであろう人物もここでいう師匠に当たります。その技能の修行をしている期間、そういった人物がいれば、「師匠がいる場合」の式を使用して、 修行ポイントを計算します。

経歴の設定上、その期間は一人で修行をしていたのなら、「独学の場合」の式を 使って修行ポイントを算出します。

技能レベルの決定

修行ポイントを算出したら、その時点での技能のレベルを決めます。 これは、技能レベル決定表を見て決定してください。 修行ポイントは累積していきます。 修行ポイントを表の必要修行ポイントと見比べて、 レベルを決定してください。

技能レベル決定表
レベル12345678910
必要修行ポイント2080180320500720980128016202000
レベル111213141516n
必要修行ポイント242028803380392045005120 20 × n2


一ノ八ノ四 特技の取得

特技とは、経験の中で培われた、個人が得意とする技術です。 特技の詳細な説明と一覧表は、四ノ二「特技」を参照してください。

職業につくことで、キャラクターは各職業の「特技」に書いてある三つの特技を 修得します。 職業を選んで4期間 (1年) 過ぎた時点で、無条件で1レベル修得します。 すでに他の職業で修得している特技には、 レベルに1を加えることができます。

さらにCPを費やすことで、上記の三つの「特技」のどれでも、 更に成長させることもできます。このときは、1レベルにつき5CPを追加で消費します。


設定した年齢になるまで繰り返し

上記の処理を、設定した年齢に達するまで一ノ八ノ二「職業の選択」から繰り返してください。


繰り返しになりますが、経歴はあくまでも、キャラクターを肉付けする 重要な要素です。そのキャラクターが送ってきた人生ということで時代劇らしい経歴を考えて、 プレイして楽しいキャラクター作りを目指してください。

一ノ九 特技(自由選択)の取得

経歴で得られるものとは別に、 プレイヤーが好きな特技を、いくつでも自由に選択して取得できます。 取得しなくてもかまいません。CPが許すなら、レベルを成長させることもできます。 経歴中に取得した特技を成長させることも、もちろん可能です。

特技を修得、成長させるためには、特技1レベルにつき、 5CP消費しなくてはなりません。

一ノ十 CP・所持品などの記録

個人設定用紙の残った項目を埋めていきます。

「CP」の欄に残ったCPを、「座布団」の欄には0と書いておきます。 座布団についての説明は五ノ五「座布団」で説明します。

所持品を、最終的にキャラクターがついている職業のデータから書き写します。 これはキャラクターが自分の職業柄、自由に使える物です。 なお、「秘伝の声」には所持金の類は存在しません。 なにかを買いたいとき、サービスを受けたいときは、ゲームマスターがそれが 可能であるかを判断してください。詳しくは九ノ一ノ四「所持金について」を参照してください。

特に武器については、丙ノ六「武器リスト」を参照して「戦闘データ」の欄を埋めてください。

一ノ十一 寿命

以上の項目がすべて記入し終えた段階で寿命を決めます。 寿命は現時点での年齢以上で、100歳以下でなくてはなりません。

江戸時代当時の平均寿命は50歳前後です。 しかし、60歳以上の人もそれほど珍しくはありません。

特徴の中には、寿命を制限するものがあります。 こうした特徴を持っているときには、 それを考慮に入れた上で寿命を決定してください。

一ノ十二 名前

最後にキャラクターの名前を決定します。当然、全員が日本人名になります。

名字をつけることが許されているのは武士だけです。 商人は、自分の屋号が名字代わりなので、必ず「屋」の字が名字の末尾につきます。 その他の職業には名字がつきませんが、 住んでいるところや特徴などを取って通り名となることはあります。

女性のキャラクターは名字を持たず、名前もひらがなで数えて、二字か三字になります。 二字の名前の場合には、敬称、愛称として、名前の前に「お」をつけて呼ぶのが普通です。

一ノ十三 個人設定例 --- 用心棒「勝新左衛門」のできるまで ---

ここで、個人設定の例として、「大物レベル」、 つまりCP +50 のキャラクターを実際に作ってみましょう。


キャラクターのイメージ

プレイヤーは彼のキャラクターを、青年期を過ぎて中年にさしかかった、 浪人上がりの用心棒ということで作ることにしました。 ちょっと崩れた感じで、人付き合いがあまり上手くないが腕はそこそこ、 というイメージで作ることにします。

自分のプレイしやすいキャラクターにすることが重要ですね。 映画や小説、マンガの主人公を頭に思い浮かべるとよいでしょう。 別に時代劇・時代小説にこだわることはありません。むしろ時代モノ以外、 例えばSFや学園モノなどから材を取っても面白いでしょう。


年齢・性別の決定

イメージが中年にさしかかったということで、 年の頃は35歳、性別は男性とします。


キャラクターポイントの算出

年齢が35歳なので:

35 + 50 = 85
となります。これを個人設定用紙「CP」の欄に書き写します。


能力値

プレイヤーは彼のキャラクターの能力値を:

腕力:敏捷:器用:知恵:知覚 = 1:0:0:-1:1
としました。用心棒を目指すだけにそれなりに腕力に自信があり、 また多少血の巡りは悪いですが、注意深さと持ち前の感覚のよさで 世渡りをしてきたといった感じでしょうか。 決めた通りに個人設定用紙の「能力値」に書き写します。

また、全部合計して能力値は 1 になるので、消費CPは 1 × 10 = 10、 現在のCPは 85 - 10 = 75 となりました。

能力値はあとで成長することは決してないため、慎重に決めなくては なりません。しかしここでも大事なのはキャラクターイメージです。 ある能力値が突出して高い、また低いのであれば、それは何らかの 説得力のある理由があるはずです。それを考えることが、キャラクターを 肉付けしていく上で重要のことです。


経験能力値

次に、プレイヤーは彼のキャラクターの経験能力値を:

気合い:精神力:勘働き=1:1:2
とします。〈勘働き〉が2と少し高めですから、先ほどの〈知覚〉の高さと あわせて、なかなか動物的な感性に優れたキャラクターであるといえるでしょう。 これは個人設定用紙の「経験能力値」に書き写します。 経験能力値の合計は 4 ですから、消費CPは 4 × 10 = 40、現在のCPは 75 - 40 = 35 となります。
経験能力値は能力値とは違って、あとから成長させることができます。 したがって現在の値というのは、これまで生きてきた人生でどのような 能力を獲得してきたか、をあらわす指標と考えてもいいでしょう。 ですから、これもやはり数字一つ一つに意味付けをして考えてください。


特徴

キャラクターイメージとして「ちょっと崩れた」というのがあるので、 プレイヤーは「刺青」「中毒(たばこ)」を特徴として取ることにしました。

「刺青」「中毒(たばこ)」の消費CPはそれぞれ -5 なのでCPにあわせて10加えて、 現在のCPは 35 + 10 = 45 となります。
特徴は、性格と並んでキャラクターを演じるキーとなるものです。 消費CPにこだわることなく、キャラクターイメージに沿った特徴を選びましょう。 特徴が多ければ多いほどキャラクターが 立ち、その一方でプレイする上での制約条件が増えていきます。その兼ね合いも 考えて、自分のキャラクターにふさわしい特徴を慎重に検討してください。


性格

プレイヤーはキャラクターの性格として、「朴訥(ぼくとつ)」と「頑固者」を選びました。
彼は、無口で自分を曲げない男が時折いいセリフを吐く方がカッコイイと思ったのです。

「朴訥」「頑固者」の消費CPは両方とも -10 なのでCPに20加えて、現在のCPは 45 + 20 = 65 となります。

「秘伝の声」では、プレイヤーに、キャラクターの性格に沿ったプレイを要求します。 自分の演じてみたい性格を慎重に選んで、 それを元にしためりはりのあるプレイをしましょう。


経歴

プレイヤーは、彼のキャラクターに次のような経歴をたどらせることにしました。

10〜18歳 (8年)浪人
18〜25歳 (7年)破落戸(ごろつき)
25〜35歳(10年)用心棒

経歴その1 - 浪人

「浪人」は「初期職業:可能」ですから、初期職業として選ぶことができます。 初期職業の選択にはCPの消費は必要ありません。
期間

プレイヤーは、彼のキャラクターは浪人の家に生まれ、 18歳まで8年間、つまり 8 × 4 = 32 期間浪人暮らしをしていたことにしました。

技能

浪人は技能を「武術系技能(一般)」から取得可能なので、 〈剣術〉だけを選択します。 才能はCP 30ポイントを消費し、3ポイント (現CP = 65 - 30 = 35) に決めます。

技能を一つしか取得していないので、 浪人であった32期間をまるまる〈剣術〉の修行に 振り分けることができます。

苦しい浪人暮らしのなか、道場に通う金はありませんでしたが、 息子だけは浪人暮らしから抜け出てほしいと願う父から、剣の手ほどきをうけた、 ということにしました。この場合、師匠を父と考えることになります。

そこで修行ポイントを計算すると:

(3 + 1) × 32 × 3 = 384
となり、技能レベル決定表を引いて、この時点でのレベルは3となります。
特技
浪人の特技は〈礼儀作法〉〈地域知識〉〈内職〉ですから、 それぞれ1レベル修得します。個人設定用紙にその旨を記録します。 内職は傘張りということにして、個人設定用紙には「内職(傘張り)」と記入します。

経歴その2 - 破落戸

プレイヤーは、18の歳にキャラクターが家を飛び出し、破落戸の仲間入りをしたことに決めました。 これは転職になりますから、CPを10消費します(現CP = 35 - 10 = 25)。

期間

破落戸として彼がすごしたのは25歳までの7年間、とします。 期間でいえば 7 × 4 = 28 期間となります。

技能

破落戸は技能が「なし」ですが、以前に修得した技能は継続して修行可能なので、 彼は〈剣術〉を続けて修行することにします。師匠代わりだった父の元からは 離れましたが、破落戸仲間に剣客くずれが居たため、彼と共に修行することに しました。ここで得た修行ポイントは:

(3 + 1) × 28 × 3 = 336
であり、浪人時代とあわせると 384 + 336 = 720、ぴったりレベル6となります。
特技

破落戸の特技の〈賭博〉〈喧嘩〉〈嘘〉を個人設定用紙に記録します。

経歴その3 - 用心棒

プレイヤーは、キャラクターの人生に重大な転機が訪れたことにします。 破落戸としての荒れた生活のなかで、堅気(かたぎ)の娘と知り合い、 ついには足を洗って結婚した、ということにしました。

破落戸から足を洗ったキャラクターは、習い憶えた剣術の腕を生かして、 新しい職業を用心棒に決めました。キャラクターの〈剣術〉はこの時点でレベル6なので、 「5レベル以上」という制限はクリアしています。

再び転職でCPを10消費します(現CP = 25 - 10 = 15)。

期間
用心棒になったのは25歳で、現在まで継続ですから10年、 期間でいえば 10 × 4 = 40 期間となります。
技能
用心棒は〈剣術〉〈槍術〉〈弓術〉から選べます。彼は〈剣術〉に磨きをかける一方、 〈槍術〉も練習してみることにしました。彼が通い始めた道場では、両方を教えて いたのです。 〈槍術〉の才能は1ポイントということにします(現CP =15 - 10 = 5)。 あまり才能はないようです。 期間の割り振りですが、〈槍術〉は才能がないことに気づいてあまり 身を入れなかったということにして:
〈剣術〉:〈槍術〉= 30 : 10
とします。結局、それぞれの用心棒になってからの修行ポイントは:
剣術: (3 + 1) × 30 × 3 = 360 槍術: (1 + 1) × 10 × 3 = 60
となり、〈剣術〉は 720 + 360 = 1080 で7レベル、〈槍術〉は60そのままで1レベルとなります。
特技
用心棒の特技のうち〈礼儀作法〉はすでに持っているので、1レベル加えて2レベル、 そのほか〈殺気感知〉〈大音声〉はレベル1とします。


特技(自由選択)

ルール上では、さらにCPを払って特技を自由に追加したりレベルを上げたり できるようになっていますが、現在の残りCPはわずか5。 残念ながら特技を追加することはできません。

余ったCPを個人設定用紙の「CP」の欄に書いておきます。


所持品など

現在の職業「用心棒」の項を見て、所持品、住居、そのほかを個人設定用紙に記入します。 このとき、武器である「打刀」「脇差」は「戦闘データ」にデータを写しておきます。 記入方法は例を参照してください。


寿命・名前など

プレイヤーは、キャラクターの寿命を55歳、とします。当時としては平均的な寿命です。

名前は「勝新左衛門」とします。


肖像画

最後にプレイヤーは、勝新左衛門の容貌を「人相描」に描き入れます。

自分のイメージに合ったイラストを、自分で描いてもいいですし、 時代劇俳優の写真などを切り抜いて貼ってもいいでしょう。


以上で、キャラクターは完成です。

勝新左衛門の生い立ち、性格、そして過去まで、個人設定の経過を通して生き生きと描くことができたことがお分かりかと思います。

完成した「勝新左衛門」のデータを個人設定用紙に記入した例が挙げてあります。参考にしてください。


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