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『秘伝の声』出版物ができるまで

小笠原徳彦 '98.04.12


今回は趣向を変えまして、我々「火盗改メ」の出版物ができるまでの過程などをご紹介しましょう。

1.企画

まずは企画です。これはだいたい、仲間内の(実際に顔を合わせたり、火盗改メ作業用兼内輪MLの上でだったりしますが)雑談から始まることが多いです。

「最近さぁ、OO読んだんだけど面白いねぇ、あれ」
「ふーん、あれ宿題なんだよねぇ」
「やっぱさ、あれ『秘伝の声』で再現できたらなぁ、とか思っちゃうわけだよね」
「ををっ、いいねぇ。サプリ作るってこと?」
「んー、そりゃあればいいなぁ、とは思うけど」
「じゃあ、君が書くでわ」
てな感じで、だいたい墓穴を掘ってしまうパターンで執筆者が決まります。我々「火盗改メ」は大体1冊1執筆者ですので、企画といっても執筆テーマと執筆者、あとだいたい出版を目指す時期さえ決まってしまえば、あとは各執筆者の個人レベルの作業になります。てなわけで企画会議みたいなものはほとんど開かれません。

2.資料収集

執筆が決まったら、次は資料収集です。

といっても特別なことをするわけではなくて、まずは原作、あるいは原点となるものは何度も読む。ジャンルものであればアンソロジーを買い、当該ジャンルの代表作といわれるものを拾い出していく。本屋さんにはまめに足を運んで、気になる本があれば押さえておく。という感じです。

我々は歴史サークルではなくてゲームサークルですから (苦笑)、一次資料に当たるほど厳密ではありません。おおむね、書店で購入できる程度の資料しか集めていません。どちらかというと「小説などから得られる情報を補強する」という視点で資料を使っている感じです。

このフェーズと執筆のフェーズはだいたい行きつ戻りつします。資料を読んでると書きたくなることができて、書いているうちに資料不足で本屋に足を運んで、という感じでしょうか。

3.執筆

集まった資料をもとにぽちぽちと書きます。

今は大体の同人作家さんがそうだと思いますが、我々の場合も執筆活動はコンピュータ上で行います。細部は人によって違いますが、たいていの場合はテキストエディタのたぐいでひたすら書きます。

最初に章立てぐらいの構想はざっくり立ててMLに流して意見を問う場合もありますが、好き好きですね。私の場合はちょっと書いては中断し、ちょっと書いては中断し、という感じで、章立てが決まったのは完成間際でした (^^;)

書いているうちに意見を求めたくなったらMLに投げたりもしますが、おおむね一番静かなのがこの時期です。スパンが長いですからね。

4.催促

たいてい、「受かったよ」というアナウンスが代表のT氏のところに届き、その旨が通知されてから急に活動が活発化します。

代表T氏が印刷所に足を運んでデッドラインを確認した後、それに間に合うように校正日の予定を決めます。それから逆算で原稿の締め切り、組み版作業日程などが決まっていきます。

着実に執筆が進んでいれば当然このころには原稿があがってるはずなんですが、当然そう上手くいくはずがない。ケツが見えてから慌てて書き始めたりします。

資料探索 (今ごろやるな ^^;) のために神保町にみんなで出かけたり、集まって途中までを校正したり。ML上も活発化し、書きかけの原稿を流して査読・校正したり、各種業務連絡、組み版上の問題点の確認など、トラフィックが急増します。しかも1通が長い (^^;)

テストプレイが必要なものもこの時期ですね。もっと早くやればいいのに (苦笑)。

日程が煮詰まってくると当然間に合わない奴もあるわけで、そういう奴はこのころに見切りをつけられて WWW 上で告知したりします。

5.組み版

現在までの「秘伝の声」関連の出版物は、1冊を除いてすべてLaTeX によって組み版されています。LaTeX である理由としては:

(※) 「秘伝の声」第1版は PC-9801RA21 (i386DX 20MHz) で組み版 されました。「日本剣豪譚(演遊編)」の旧版は Dynabook SS433 (486SX 33MHz) で執筆されています。 ちなみに今の私の環境は SOTEC Winbook Trim (P5 133MHz) です。メモリはフル実装 (48MHz) とはいえサブノート。

といったところです。

私は仕事で MS Word なども使いますが、100 ページ超のドキュメントを書くには使い物になりません。目次作成や相互参照などといった、長い文書を書くには必須の作業が弱すぎます。またバグも多くて長い文章だとよくハングアップしますし、それに画面書き換えにしろスクロールにしろ遅すぎます。

愚痴は置いておきまして。

一応組み版技術担当である私と、組み版作業担当であるO氏が実際の作業を担当します。LaTeX のスタイルファイル、および各出版物で特別に必要なマクロのたぐいは私が書いています。

上記二人以外の原稿はプレインテキストなので、それをマークアップするのが結構な作業になります。基本的には置換コマンドなどを使うのですが。ここらへん、plain2 などを使えばもっと楽できるのではないかと考え中です。どっちにしても、執筆者からの原稿の到着が遅れると作業者は死ぬ思いをすることに (^^;)

TeX 環境は今のところ:

となっています。不自由していないので最新版を追いかけていない、ということですが、しかし、次の同人誌からは pLaTeX2ε に移行するつもりです。暫定的なクラスファイルはもう作ってあります。見た目は変わりませんがソースの美しさは向上する、かな?

角藤パッケージも大幅に変わってますし GS もバージョンあがってるし。どこかのタイミングでエイヤと移らなくてはならんな。

このレベルになるとすべての TeX ファイルおよび図表ファイルを含んだ巨大ファイルが (特に組み版関係者の間で) 飛び交うことになりますが、そのための作業場所として本ページの「秘伝の声ダウンロードサービス」があるというわけです (^^;)

6.校正・台紙張り・入稿

大体、印刷所への入稿期限の1週間ほど前の日曜日に、メンバー全員がどこかに集まって校正を行います。

メンバーのうち二人がレーザープリンタ LP-1500 を持っていますので、彼らのうちが会場になるか、あるいは会場に車で持ち込むかします。まずは印刷したものをメンバーで順に見て、直すべきところは直していきます。内容から誤字・脱字、ルビの振り方や組み版まで吟味します。困ったことにこの時点で「うがー組み版が気に入らん」とかいってマクロ書いたりしてるのは私です。

まぁ侃侃諤諤あった結果を再びキーボード叩いて修正し、最終的に印刷したものを代表T氏に渡してひとまず全員の作業はおしまい。ってなことで、版下はこの LP-1500 によるもの、ということになりますですね。

最新のスタイルファイルはA4で印刷して、印刷所でB5に縮小する形になってます。プリンタの解像度がさほど高いわけではない (300dpi) ので、この方が印刷がきれいに出るとのこと。

こうして印刷されたものは、T氏の尽力によって台紙貼り、挿し絵 (たいていはクリップアート集のようなものから。「修羅の道なり」だけ例外的に知人に発注しました) の貼り付けなどが行われ、印刷所に入稿されます。ここが個人作業になってしまうのは改善の余地ありですな。

7.瓦版・ユーザ登録ハガキ

作業が片付いてほっとしたところで、瓦版担当のO氏から原稿依頼が入ります。たいてい、新刊案内の架空対談かインタビューがあって、あとは各人書きたいことがあれば書く、という感じです。各人の原稿は ML 経由で集められ、編集人の手によって MicrosoftWord に入力されます。最終原稿はやはりテキスト版が ML に流されるので全員でチェックして、これを印刷して完成。

印刷はだいたい前日までに行われます。今は EPSON の PM-700C を使用しています。また、最終原稿ができしだい私のところに送られて WWW に登録される、はず、なのですが、タイムラグがあるのが現状ですね。

それと並行して、ユーザ登録ハガキの残数が少ない場合はこれまた印刷します。これはモノクロということもあり (ハガキですし)、LP-1500 がまたもや活躍します。

8.前夜祭および当日

刷り上がった瓦版とハガキの受け渡しのために前日集まり、だいたいいっしょに食事してゲーセンで遊びます。これが前夜祭。

当日は売り子組 (代表T氏ともう一人、だいたい新刊を出した人) が早起きで会場に向かいます。

うちは印刷所から会場に直送なので、出来上がった本を見るのはこの日が初めてになります。一度別の場所に配送されて焦りまくったことがあるそうですが (苦笑)、行きの荷物を少しでも減らせるのはやはりありがたい。とはいえ在庫分は運搬しないといけないのですけどね。

ということで会場に辿り着いたらさっそくに場所のセッティングをして、届いている本を確認。うーむ、印刷は綺麗に出ているようだ。印刷所に感謝する。新しい本のにおいはいいなぁ。

ここらへんちょっとフィクションはいってますが、私が自分の本を出したときはこんな感じでした。ハイ。

でま、あとは新刊を含めて皆さんのお手元に一つでも多く届くことを祈るのみであります。それなりに苦労していると思うので、お客様のご意見を伺えるとすごくうれしいです。皆さん、お気軽にお声をかけてくださいね。


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