「火盗改メ」特選 RPG

Shadowrun

FASA

魔法や異種族が存在するサイバーパンクRPG、「シャドウラン」について解説します。 オマケの "SHADOWRUN Third Edition 特集" もあります。


成り立ち

Shadowrun は、アメリカのRPG会社FASA Corporation が 1989 年に発売したサイバーパンクRPGです。2050年という近未来を舞台にしたサイバーパンクの世界にエルフやオーク、魔法といったガジェットを持ち込んだユニークな設定、ハードボイルド的でクールで猥雑な世界、そしてそれを補強するビジュアルによって好評のうちに迎えられ、1991年には若干のルール改定を施された第2版が登場、そしてサプリメントが続々と出版されました。今年 (1998年) 8月には、各サプリメントの追加ルールを統合し、舞台を2060年とした第3版が出版されました。そろそろ日本にも入荷するころではないかと思います。

なお、1995年に富士見書房から出版された日本語版は、第2版をベースにしています。ということで本項の解説も2版を基準にし、3版については巻末でフォローすることにしましょう。

余談ですが FASA というのは Freedonian Air and Space Administration の略だそうです。Freedonia というのはマルクス兄弟の映画「我々はカモである (Duck Soup)」に登場する国名です。

On The Edge のプロフェッショナル

Shadowrun はサイバーパンク RPG です。2050年代 (実時間の進行に伴って時間が進んでいる。1989年の初版で2050年、最新のサプリメント TARGET: Smuggler Havens では2059年、先日発売の第3版では2060年) という近未来を舞台に、企業やそのほかから表に出せない仕事を請け負う Shadowrunner が PC たちです。

Runner はストリートを自分の才覚だけで生きてきた、筋金入りのプロです。Shadowrun は危険だからこそ Runner に回ってきた仕事であり、企業にとって Runner は捨て駒にすぎないので、自分の身は自分の才覚で守るしかありません。その Edge ギリギリのところで、プロらしい感覚で的確に BIZ (= Buziness、仕事のこと) をこなす、そのカッコよさが Shadowrun をプレイする快感でもあります。


サイバーパンク + ファンタジー?

Shadowrun の魅力の一つは、サイバーパンクというSF的素材を扱っておきながら、魔法やメタヒューマンといったファンタジー要素が組み込まれていることです。

古代マヤ文明によれば、我々の世界は約5000年ごとに魔力(マナ)の増減が起こっています。現在はマヤ暦では第5世界に当たり、奇数世界はマナの減少期です。次の第6世界では再びマナが増大し、魔法が復活することになると予言されています。Shadowrun のベースになっている考えはこれです。Shadowrun の舞台は、魔法が復活 --- 覚醒 --- した第6世界なのです。

第6世界の到来により、エルフ・ドワーフ・オーク・トロールといったメタヒューマンたちが生まれるようになりました。また覚醒生物 --- クリッター --- という突然変異した生物も登場しました。大学では正規の学問として魔法 (ヘルメス主義) が研究されるようになり、またネイティブ・アメリカンはシャーマニズムによる魔法によって力を取り戻し、独立国家を作るまでになりました。

私は、(それほど詳しいわけではないので口幅ったいことは言えないのですが) サイバーパンクの魅力というのは「ガジェット」であると考えています。Shadowrun のファンタジー的要素は、ガジェットとして非常に魅力的なものです。しかし Shadowrun のすごいところは、単に魔法を取り入れて事足れりとするわけではなく、その設定に徹底的にこだわり、実在感を持たせたことにあると思います。


現代アメリカの病巣を抉る

一方で Shadowrun は、サイバーパンク RPG です。サイバーパンクというのはなにより「パンク」であること、"High Tech, Low Life" という言葉に象徴される On The Edge な生き方を肌で感じることが出来ること、が魅力ではないかと思います。Shadowrun は、現代アメリカの問題点をある意味誇張して表現することで、この点に付いても満足いくものになっています。

たとえばメタヒューマン。アメリカという国は人種差別に制度的に厳しい国ですが、逆に言えばそれだけ差別意識というのが存在する国であるといえます。今でも南部などの人種差別意識が強いところでは、KKK (クー・クラックス・クラン) が新聞広告を出していたりするそうです (「親愛なる白人諸君!」とかいって)。で、Shadowrun には「ヒューマニス・ポリクラブ」という KKK をモデルにした団体があって、そのセリフが:

肌の色は、もはや問題ではない。問題は、我々か、奴等かということだ。人間かメタヒューマンか。

感覚的には、エルフやドワーフはドイツやロシアといった白人系移民、オーク・トロールはヒスパニックや黒人、アジア人といった民族の社会ステータスのメタファーなんではないかと想像します。差別という実にサイバーパンクらしい題材を扱うのに、メタヒューマンという存在を利用するというのが巧みです。

たとえばメガコーポ。現在の経済を見ていても分かりますが、不況時代における競争の生き残りをかけて、企業の統廃合がすすんでいます。企業の規模が大きくなればなるほど、不況を乗り切る余力ができるからです。マクダネル・ダグラスがボーイングに吸収されたのはつい先日のことですし、メルセデスとクライスラーが合併したのもごく最近です。銀行系もどんどん吸収合併が進んでいます。そして企業が大きくなればなるほど、政府と拮抗する力を持ちだす、という推論は決して不自然ではないでしょう。まぁこの仮定自身は別に Shadowrun 独自のものというわけではないのですが、メガコーポの実態を描いた "Corporate Shadowfiles" などのサプリメントの説得力は流石といえます。

それ以外にも、マスメディアやBTL (電子ドラッグ) など、病巣ではないにしろアメリカの現状をうまく外挿した設定が、実在感を高めているといえるでしょう。


アーキタイプとキャラクターメイキング

さて、ルール面の説明に移りましょう。多少ヘビーな面もありますが、世界観に負けず劣らず実にユニークです。

Shadowrun には、多彩で魅力的なアーキタイプが多数用意されており、すぐにプレイを始めることが出来ます。

アーキタイプというのは、背景や名前といった個人情報以外はすべて作ってある出来合いのキャラクターのことです。キャラクターメイキングの手間が省けるのはもちろんのこと、どんなキャラクターが「典型的」なのか、を示す重要な資料となります。

サイバーウェアをたくさん埋め込んだ戦闘マシーンストリートサムライ、サイバースペースを華麗に翔けるテクノマンサーことデッカー、街に在って精霊の声を聞くストリートシャーマン、神経と車両の制御系を直結し、肉体の一部のように車を操るリガー、戦場を自分の腕で生き抜いてきたマーセナリー、ストリートを自分の庭とするギャングメンバー、ヘルメス魔術を戦闘に生かしきったコンバットメイジなど、アーキタイプを使えば、すぐに Shadowrun の世界に飛び込むことができるでしょう。

もちろん、フルスクラッチのルールも存在します。Shadowrun のキャラクターメイキングは、「種族」「魔法」「能力値」「技能」「財産」に Priority をつけ、それぞれの Priority に対応するポイントを割り振るという、変形ポイント割振り制です。サイバーウェアをたくさん入れたいから財産を高くするとか、技能に高 Priority を割り振って万能タイプを目指すとか、種族をトロールにしてアレルギーで腕力上げて馬鹿力のフィジカルアデプトを作るとか、いろいろなバリエーションが楽しめます。

面白いのは、「コンタクト」(コネ) や友人といった人脈、そして生活レベルを財産で「買う」ことです。生活レベルなどは月払いですので、上流の生活を維持するにはよほど稼ぎがないと大変です。このドライさが何ともナイスといいますか、私の好みです。


行動判定とスキルウェブ

Shadowrun はスキルシステム制を取っているのですが、その判定システムは非常にユニークです。

まずダイスの振り方。スキルレベルの数だけの6面体ダイスを振り、目標値以上が出たダイスの数を数えます。6が出たダイスは振り足しできますので、目標値が6より大きくても成功は可能です。成功した数が多ければ多いほど「よりよく成功した」ことになります。

スキルレベルに後述するダイスプールを加えると、10個以上の6面体ダイスをじゃらじゃらと振ることになります。たくさんのダイスの山から目標値を超えたものを選り分ける快感はなかなかのものがあります。この気持ちよさも、Shadowrun の魅力の一つといって間違いではないでしょう。

そしてスキルウェブという、各技能間の関係を示した図によって、技能なし判定をスマートに解決しています。ある技能の判定を他の技能や能力値を使って行うのに、目標値をどうするのか一目瞭然です。これで「一点豪華主義」でも活躍することが可能になり、キャラクターメイキングの戦略性が一段と高まるといえます。


緻密さと遊びやすさのバランスが取れた戦闘システム

Shadowrun は、危険と背中合わせの BIZ をこなす、という、戦闘志向の RPG です。ですから戦闘の面白さは、Shadowrun の面白さの大きな要素です。Shadowrun の戦闘システムは、緻密さと遊びやすさのバランスがよい、戦略性の高い優れたルールです。

まず重要な概念がイニシアティブです。イニシアティブは能力値〈反応力〉をベースに、魔力やサイバーウェアで強化することができます。たとえばアーキタイプのストリートサムライであれば[8+3D6]、ストリートシャーマンならば[2+1D6]などとなっています。1ターン (3秒です) の最初にダイスを振ってイニシアティブを決め、それを10づつ引いて0になるまで行動できます。たとえば 23 なら 23、13、3 で行動できるわけです。
このため Shadowrun の戦闘は、「とにかく早いほうが勝ち」「2時間かけて戦闘したがゲーム内時間は10秒」とかになりがちです。それはそれでまた面白いのですが。

もう一つ面白いのがダイスプールです。この一つであるコンバットプールは、戦闘中に振ることができる余分なダイスで、攻撃にも防御にも使えます。「自分の行動が回ってきたとき」に回復します。攻撃につぎ込んで一撃必殺を狙うか、回避にとっておいて守りを固めるか、割とカンタンなルールながら頭を絞る面白さがあります。
なおダイスプールには魔法やデッキングに使えるものも別に存在します。

戦闘の判定は、攻撃側の武器技能と防御側の強靭力による一種の(変則的な)対抗判定です。それぞれの武器には回避しにくさと実際のダメージの二つがあり、それを[9M]というように表現します。9が回避しにくさで、Mが実際のダメージです。武器によっては3点バースト(引き金を一回引くだけで3発弾が出る)やフルオートといった射撃モードがあり、使い分けることによって命中率とダメージをいろいろ制御できます。ここらへんの抽象化はなかなかナイスだと思います。

前記の "M" というのはダメージ・コードで、Light (微傷)→Moderate (軽傷)→Serious (重傷)→Deadly (致命傷)となっています。当然ダメージは累積しますので、Lダメージでもたくさん食らっていれば死にます。また、命中判定において成功数の差2個ごとにダメージは前後します。ですからダイスさえたくさん振れば、L武器でも一発で致命傷となりえます。逆にDダメージでも気合いで防御に成功すればSやMまで落とせるということです。またダメージを受けているとイニシアティブと目標値に (不利な) 修正が加わります。これもまた「早いほうが勝ち」な傾向に拍車をかけています。

ダメージには精神ダメージ (Stun)身体ダメージ (Physical)の2種類があります。銃などの攻撃は身体、棍棒や素手などでは精神ダメージです。これらは別に管理されますが、精神の場合振り切れると気絶した上、以降のダメージは物理に入っていきます。気絶した奴を殴りつづけると殺せるわけですね。また前記の不利な修正は精神と物理の両方にあり、双方の効果は累積します。


これぞ第6世界の力・魔法

Shadowrun を彩る魅力の一つ、それが魔法とデッキングでしょう。

魔法は、ネイティブアメリカンの伝統的なシャーマニズムと、西洋的なヘルメス魔術(錬金術)に別れます。ただこの二つは方法論こそ違えど結果は同じ、ということで、ルール的にはほとんど差はありません。

シャーマニズムのほうではトーテムがキーです。トーテムというのはシャーマンの守護獣 (笑) のようなもので、シャーマンの生き方の範ともなります。またゲーム的には各種の得意・不得意分野があったり能力値修正がついたりします。キャラ立てにはグッドですね。

また、ドレイン、つまり魔法をかけることによって自分が受けるダメージのルールも面白いところです。Shadowrun にはマジックポイントが存在しないので、これがその代わりといえばいえます。ドレインは普通精神ダメージですが、魔力が低いキャラクターが難しい呪文を唱えると物理に入ります。サイバーウェアを入れていると魔力が下がるので、サイバー化したために魔法を唱えるたびに血を吐くバーンナウト・メイジというオイシイ(笑) アーキタイプもいます (未訳の Gamemaster Screen に収録)。

これ以外にも、精霊を召喚したり (シャーマンとメイジでは呼べる精霊が異なったりします)、アストラル界に入って探索やら魔法の投射やらしたり、 サプリメントで追加されるイニシエイト (入信) やメタマジックのルール、さらにはブードゥなどのルールも興味ぶかいところです。


えーと……デッキング……なにそれ (^^;)

Shadowrun はサイバーパンク RPG なわけですからギブスンノリのデッキング (ハッキング) のルールもあります。デッカーが自分のペルソナプログラムによってサイバースペースを駆け巡るわけです。

ですが、「サイバースペースの中は他のプレイヤーが見ることが出来ない」ことによって、どうしてもシナリオの中から浮きがちではあります。ということでここの部分は解説できるほどルールを知りません。ゴメンナサイ。

でもこのことは Shadowrun の価値を貶めるものでは何らないと申し添えておきましょう。やりたければルールはちゃんと在るわけですし。


SNEの東京設定とJISプロジェクト

Shadowrun の日本での展開は、グループ SNE が行っています。1995年にルールブックを翻訳した後、「RPGドラゴン」誌上においてリプレイや小説が連載されて……いたそうです。って、私は読んだことがありませんが。

日本語版ルールブックの最後に東京設定が載っていますが、これが総じて退屈です。ルールブック冒頭の「かくて世界は……」のワクワク感はどこへいってしまったのでしょうか。これは「TOKYOソースブック」でもいえることであり、後者については FASA のタイムラインとの整合性が低いという点で評価を落としているといえます。

無論、SNE の東京設定は、独立な RPG の設定としてみればそれなりのものなのかもしれません。実際、それを使って「遊ぶ」ことには十分なものです。しかし、オリジナル Shadowrun との落差はいかんともし難いものがあります。

個人的好みで物を言わせていただければ、ルールブックから、そして海外サプリメントから得られるイメージと、日本語のリプレイや小説、TOKYO ソースブック (特にイラスト) から得られるイメージに差がありすぎます。前者にあこがれて Shadowrun を好きになった私にしては、それだけでもかなり許し難いものがあります。

一方、FASA 設定との整合性を保ちつつ、日本人ならではの日本設定を作ろうという同人レベルの動きの一つが JIS Project です。JIS というのは Japanese Imperial State (日本帝国) であり、FASA 設定に実在します。

同人ならではのパワーと禁忌を恐れぬ (というより禁忌を上手く使った) 刺激的な設定は、SNE の東京設定に満足ならなかった向きにはオススメであります。


「秘伝の声」に与えている影響

直接にはあまりないのですが、先日発売されました「殺しの掟 第3版対応版」の新職業「とがり屋」は、かなり Shadowrun の影響下にあるといえます。特にサプリメント Fields of Fire の冒頭の読み物 (タイトル失念しました。すみません) の「プロフェッショナルとは」という考え方は、とがり屋記述の目標の一つでした。

あとはサプリメント The Neo Anarchists' Guide To Real Life に対抗して「渡世人真ノ生活」なるサプリメントのタイトルを思い付いた私はダメでしょうか? あっ、石投げないで (^^;)


まとめ

そろそろ推薦者の好みがお分かりだと思いますが、私は:

なゲームが好みです。あなたがもしそういうゲームをお好みであれば、Shadowrun はきっとお気に入りのゲームの一つとなるでしょう。特に世界観のユニークさは特筆すべき物があります。

ルールはかなりヘビーな部類ですが、最初は戦闘と魔法 (特に呪文投射とアストラル) だけに絞ってプレイすれば割とすぐに遊べるでしょう。それでも Shadowrun の一番オイシイところは味わえると思います。

先日発売されたばかりの第3版が日本で翻訳、発売される確率は非常に少ないとはいえ、2版ベースの日本語版でも十二分に遊べます。まだまだサプリメントも店頭在庫は豊富ですし、今手を出しても決して損はしないでしょう。

それと最後に一つ。もしスーパーファミコンをお持ちであれば、DATA EAST から発売されている「シャドウラン」をぜひ入手してプレイしてみてください。RPG の Shadowrun の雰囲気がよく出ている傑作です。


参考ページ

推薦:おがさわらなるひこ '98. 9. 13


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