"Hiden no koe" on WWW - Rule Book

第一章 殺し稼業

本章では、江戸の暗黒街の中でも、人殺しを仕事とする職業「仕掛人」と「とがり 屋」の説明とデータを提供します。 「秘伝の声」基本ルールの職業データと同じように使用することができます。 まずは個人設定から、江戸の暗黒街へと踏み出しましょう。

殺し稼業データの見方

まず、職業データのについて説明します。 基本的には「秘伝の声」基本ルールブック第二章「職業」と変わりません。

初期職業
キャラクターの経歴で、最初に選択できる職業か否かを示します。
必要条件
その職業につく条件を表します。 この条件を満たしていないキャラクターはその職業につくことは出来ません。 ただし、「初期職業」として選ぶ場合は、「技能」「特技」の条件を満たす必要は ありません。
技能
その職業につくことで、修得する機会が得られる技能です。 その職業についた時点で修得していない技能は0レベルから始まります。 ここに書かれている技能から一つを選んで、修行することができます。 修行できる技能は、一期間につき一つだけです。技能の修行開始年齢は最低10歳以上です。
特技
その職業につくことで修得する機会が得られる特技です。 職業について一期間経過すると、その職業に示されている特技をそれぞれ1レベルずつ、 自動的に修得します。それ以降はCPを消費してレベルをあげることができます。
所持品
その職業につくことで、普通、所有しているものです。
住居
その職業についたときの住まいです。
兼業
殺し稼業の隠れ蓑としてつくことができる表向きの職業です。表の職業は必ずつかな くてはなりません。表の職業で得られる技能、特技、所持品、住居などは、そのまま 使用できます。また、技能の修行は、表の職業の技能を修行することができます。

殺し稼業データ

仕掛人

初期職業
不可
必要条件
なし
技能
仕掛け
特技
探索、気配消し、変装
所持品
仕掛けの道具一式
住居
表の職業に準ずる
兼業
武士・町人

仕掛人とは江戸の裏社会に生きる暗殺者のことです。 彼らは誰にも決してさとられ ず、 証拠を残さず、 そして標的となる相手だけを確実に殺害します。 基本的に仕 掛人は一人で仕事をします。 時として、二人以上でやることもありますが、そうし たことは滅多にありません。

仕掛人が殺しを働くのは、依頼された場合のみです。 殺しを依頼する人はまずその 土地の顔役である香具師の元締のところへ行きます。 元締はその依頼を聞いた後、 手持ちの暗殺者の所へ行って仕事を持ちかけます。 このときの元締の役割を「蔓(つる)」と呼び、 この「蔓」から見た暗殺者のことを「仕掛人」と呼ぶのです。

蔓と仕掛人の立場は対等です。 仕掛人は仕事を断ることもできますし、 その場合は 蔓も諦めなければなりません。 しかし、もし仕掛人が殺す相手の名を尋ね、 それを 聞いた場合には、仕事を引き受けなければなりません。 しかも依頼人が誰であり、 殺す理由も教えてはもらえません。 仕掛人には、「世の中の人のためにならぬ奴」 だけを殺す、 という誇りがあります。 そのことに関しては蔓を信用しきらなくては なりません。 蔓としても仕事は確実にこなしてもらわなくてはならないので、 ここ は持ちつ持たれつの関係でもあります。

仕事を引き受けると、仕掛人は法外な依頼料の半金を受け取ります。 後の料金は成 功報酬です。 じつはこの金は依頼主の依頼料の半額で、 もう半分は蔓の取り分と なっています。

例えば、依頼人が100両を用意して暗殺を依頼したとします。 そのとき、50両は蔓の もので、仕掛人は 半金としてまず25両を仕事の前にもらい、 さらに、暗殺を完了し た時点で、残りの半金である25両を受け取ることになります。

仕掛人は慎重に計画を練ります。 目指す相手のすべてを調べあげ、 確実に殺せると きを選び、実行します。

そして、仕事の後、かなり長い期間、仕掛人としての仕事をしません。 仕掛人の仕 事とはそれほどまでにも神経をすり減らすものであり、 また、それは足がつくのを 恐れているためでもあります。

とがり屋

初期職業
不可
必要条件
なし
技能
刺し技
特技
気配消し、尾行、変装
所持品
暗殺の道具一式
住居
表の職業に準ずる
兼業
武士・町人

とがり屋とは金ずくで人を殺す、暗殺のプロフェッショナルです。 「秘伝の声」基本ルールでは「殺し屋」という職業でしたが、より専門化された殺し 稼業として、「殺しの掟」では「とがり屋」に変更しています。

また、技能の「刺し技」はとがり屋専用の殺しの知識や技の熟練度合いを表していま す。

もともととがり屋とは、「人を殺す者」が変化し、「人狩り屋」から「とがり屋」と なりました。また、「徒狩り屋」「頭狩り屋」「屠狩り屋」から来ているとも言われ ています。暗黒街の顔役にとっては、仕掛人と同様に、殺しの仕事には欠かせない存 在です。

とがり屋は殺す相手を問いません。 男であれ女であれ、善人であれ悪人であれ、蔓 に依頼されれば誰であっても殺します。 期限が短くても、報酬次第でその仕事を やってのけます。 とがり屋は仕掛人ほど綿密な下調べの元に人を殺すわけではあり ませんが、 自分に火の粉が降り懸かるようなまねはしません。 目標となる人物を迅 速に、確実に殺すプロフェッショナル、 それがとがり屋なのです。

とがり屋もいろいろな事情があって人生の裏道を歩くようになった者たちです。 し かし、彼らの中には、元から人を殺すことが性に合っていたのか、 殺しの仕事を喜 んで引き受ける輩もいます。

とがり屋の多くは暗黒街の顔役に従属しています。顔役は自分の縄張り争いや、 個 人的な敵を消したりするためにとがり屋を使うので、 とがり屋は自分の手足のよう に使えた方が都合がよいのです。 とがり屋にとっては、顔役に従属していた方が安 全です。情報収集や必要な道具の準備、逃走経路の確保、事後処理、隠れ家の準備な どを顔役に任せることができるからです。

中にはフリーランスのとがり屋もいます。彼らは独立した個人あるいはグループで行 動し、自らの正体を隠す術に長け、それを武器に相手に近づいて殺しを行います。自 らの腕前を売り物にしているだけあって、報酬は従属しているとがり屋よりも高い金 額になるでしょう。このような、どの組織にも属さない、フリーランスのとがり屋を 「流浪(ながれ)とがり屋」あるいは単に「流浪(ながれ)」といいます。

とがり屋にとっての蔓とは、人を殺すことで大金をくれる強力なパトロンです。 と がり屋には、相手を殺して誰が得をし、誰が損をするのかなど、関係ないのです。

仕掛人ととがり屋は相容れない存在です。 もちろん共同作戦などは 望めません。 仕掛人ととがり屋が同時に登場する場合は注意してプ レイしてください。

初期職業
可能
必要条件
香具師・ごろつきからの転職、または初期職業から継続
技能
商い
特技
地域知識、眼力、口上
所持品
煙管、匕首
住居
持ち家
兼業
商人

注:蔓のデータは基本ルールブックの「香具師の元締」のデータと共通です。

蔓とは、仕掛人に直接仕掛けを依頼する立場にある者のことです。つまり、蔓とは暗 殺の仲介者のことです。

蔓になる者は、香具師の元締など、暗黒街を取り仕切る顔役達です。彼らは諸方の盛 り場を取り仕切るだけでなく、縄張り争いや非合法な犯罪などにも手を染めていま す。江戸時代のマフィアのようなものです。

暗黒街の顔役という存在は、社会の中で黙認されています。何か犯罪が起きて、捜査 の進展がはかばかしくなかったり、難しい事態になったりしたときには、同心や御用 聞きが、裏の事情に通じている顔役のところに協力を要請することもあります。

また、一般人にも顔役の存在を知っている人は少なくありません。大きな店を持つ商 人などは、彼らと円滑な関係がなければ、その地元で上手くやっていくことはできな いでしょう。顔役達がやくざな人間であることを知っていながらも、地元の権力者と して認めているのです。なぜ、彼らのような存在が堅気の人々に容認されるのかと言 えば、彼らは決して堅気の人々に手を出すことはなく、暗黒街での抗争を表に持ち込 むことはなく、悪人同士だけでけじめをつけているからです。暗黒街の顔役達はその 代表として、必要悪として認識されているのです。

さて、そんな顔役のところには、「人を殺して欲しいが、自分に危害が及ぶのは困 る」という頼み事が持ち込まれることがあります。顔役にとって、人一人殺すことは わけもないことですが、依頼人に危害が及ばぬように、「誰にも知られず悟られずに 殺す」となると難しくなります。また、暗殺者が簡単に捕まってしまうようでは、命 令を下した顔役自身にも捜査の手が伸び、身を危うくしてしまうかも知れません。

そこで顔役は莫大な報酬の代わりに、顔なじみの暗殺のプロに仕事を依頼します。こ の時の顔役の役割が「蔓」と呼ばれ、蔓から暗殺の仕事を請け負う者を「仕掛人」と 呼ぶのです。

仕掛人が行う暗殺は「この世のためにならぬ奴」を殺すものでなくてはなりません。 顔役の権力抗争や私利私欲のために殺すのではない、あくまで「世のため人のため」 の暗殺なのです。

蔓もそのあたりは心得ていて、蔓が仕掛人に回す殺しの仕事は、そういう依頼を選ぶ ようにしています。その掟を破るようなことがあれば、仕掛人は二度と、その蔓の依 頼を受けてはくれないでしょう。

顔役が必要とする殺しの仕事は、仕掛人向けのものばかりではありません。彼らは 暗黒街での権力抗争に身を置いており、そのための殺しや暗黒街での筋を通すための 仕事などもあるのです。そうした殺しの仕事を引き受けるのが「とがり屋」です。

とがり屋にとって「殺しは商売」です。仕掛人のように仕事をえり好みしません。依 頼人にどんな事情があろうとも、それはとがり屋の仕事には何の関係もないのです。 その点では、とがり屋は自分のために使う殺し屋として重宝します。

とがり屋に依頼を持ってくる役割もまた、「蔓」と呼ばれます。しかし、暗黒街の顔 役に従属しているとがり屋なら、顔役の連絡役が蔓となり、間接的に依頼を受けるこ ともあるでしょう。

蔓はPCには向かない職業ですが、もしPCが蔓をやる場合や、NPCの蔓に明確な データが必要な場合は、「香具師の元締」の職業データを使用して下さい。

inserted by FC2 system