「秘伝の声」の戦闘ルールは、剣術を中心とした武術による戦闘を再現していま す。しかし、仕掛人の「仕掛け」と、とがり屋の「刺し」は、戦闘とは似て非なるも のであり、「秘伝の声」の戦闘ルールだけでは再現しきれません。
本章では、殺し稼業の独特の暗殺スタイルを再現するための追加ルールを紹介しま す。
なお、本章では、本文中に「仕掛人」「仕掛け」と記述されている部分は、「とが り屋」「刺し技」にも対応して、同じ説明が適用されます。
仕掛けや刺し技は本来の戦闘ルールの範疇外にあります。他の人にも目的の人物にも、悟ら れず気づかれず、確実に殺す。それは「戦闘とは似て非なるもの」です。そこで、仕 掛けを行う時には特別なルールとして「仕掛け戦闘」のルールを使用します。仕掛け 戦闘が使用できるのは、《仕掛け》《刺し技》の技能を持つ、仕掛人ととがり屋の キャラクターだけです。
武器などの道具を使って仕掛けをする場合、判定は「秘伝の声」基本ルール 「不意打ち」を適用します。
仕掛人 | = | 《仕掛け》 | + | 〈適当な能力値〉 | + | 2D |
仕掛けられる側 | = | 《殺気感知》 | + | 〈勘働き〉 | + | 2D |
「適当な能力値」は、仕掛けや刺しを行うときの方法によって、適当な能力値を選 択して使用します。たとえば、藤枝梅安のように鍼を相手の急所に刺すなら〈器用〉 ですし、相手の首を絞めて殺すなら〈腕力〉を使用します。
仕掛け戦闘で仕掛人が勝った場合、仕掛けられた相手は致死判定することなく、死 亡します。
逆に仕掛けられた側が勝つと、仕掛人は相手に傷を負わせることもできず、相手に 気づかれてしまいます。そうなってしまっては、仕掛けのチャンスは失われてしま い、次のチャンスを待たなくてはなりません。また、顔を見られてしまうかもしれま せんし、今後は命を守るために、周囲への気配りが行き届いて、仕掛けがやりにくく なってしまうでしょう。
仕掛けを行う際に、仕掛けのみに使用する特殊な能力ではなく、職業などで身につ けた技能や特技も利用することもできます。 この場合は、仕掛人は以下の判定値で対抗判定することができます。
仕掛人 = {《仕掛け》 + 《使用する技能または特技》} / 2 | + | 〈適当な能力値〉 | + | 2D |
つまり、《仕掛け》技能と《使用する技能または特技》の平均を使って判定をする のです。
《使用する技能または特技》というのは、たとえば、武士の仕掛人が剣術やその他 の武術系技能を仕掛けに使うとか、鍼医者が鍼を打ち込む知識や技術を使って仕掛け る場合、その技能を使って仕掛ける、といった場合に使用します。
吹き矢などの特殊な武器を仕掛けのためだけに使っている場合や、町人が武術系の 技能を身につけていないにもかかわらず武器を使用して仕掛ける場合などは、「仕掛 け」技能のみの判定を使用します。
仕掛け戦闘で、仕掛人は相手を仕掛ける状況によって、判定値に様々な修正を受け ます。状況が重なれば、修正は加算されていくので、できるだけ修正がプラスになる 状況に相手を持っていくことができれば、仕掛けは成功しやすくなるでしょう。 状況別の修正は以下のとおりです。
状況 | 修正 |
---|---|
相手の背後から仕掛ける | +1 |
離れた距離から仕掛ける | +1 |
闇に乗じる | +1 |
周りに人がいない | +1 |
相手が眠っている | +1 |
相手が酔っている | +1 |
相手が何かに気を取られている | +1 |
相手が身の危険を感じて警戒している | -1 |
自分がその場にいては不自然である | -1 |
毒を盛ったり、罠を張ったりして仕掛ける場合も「仕掛け戦闘」を使用します。た だし、この場合は仕掛人が直接相手を殺すわけではないので、仕掛人が判定で負けた 場合は、「相手は仕掛けに気づいて、失敗した」という結果になります。
毒を盛るなどの間接的な仕掛けの場合は、前述の「仕掛ける状況」の修正を受けま せん。代わりに以下のような修正を受けることになります。
状況 | 修正 |
---|---|
相手が身の危険を感じて警戒している | -1 |
相手が喜んで仕掛けに手を出すような状況(好物を食べる、仕掛けのある部屋に 赴く、珍しい品を手に取るなど) | +1 |
相手の注意が散漫な状況 | +1 |
《仕掛け》技能は普通の技能と違い、修行で成長するわけではありません。そこ で、「秘伝の声」の技能成長ルールとは別に、《仕掛け》技能専用の成長ルールを紹 介します。
《仕掛け》技能は日々の修行の積み重ねによって成長するものではなく、むしろ現 場での経験によって成長するものです。そこで、《仕掛け》技能はCPを使って成長 させるようにします。
キャラクターが「仕掛人になる」と決断したとき、あるいは仕掛人になるきっかけ を得た(たとえば、人を殺したなど)ときから、《仕掛け》技能0レベルを得ます。
以降、
次のレベル × 10 CP
を消費して、次のレベルに成長させることができます。
一度に2レベル成長させる場合も、その前のレベルの成長に必要な分のCPを加え て、CPを消費しなくてはなりません。たとえば、1レベルから3レベルへと成長さ せる場合、2レベルへの消費分20 CPと、3レベルへの消費分30CP、合わせて 50CPを消費しなくてはなりません。
個人設定の時点でベテランの仕掛人を設定し、はじめから《仕掛け》技能を得てい る場合は、
仕掛人として活躍した期間 × 10 CP
を新たに得ることができます。
ここでいう「期間」は、「秘伝の声」基本ルールの技能成長ルールで説明されてい る「期間」と同じで、一季節を1ポイントと数えます。つまり、一年間で4期間とな ります。
ここで得たCPは能力値や経験能力値、特技を伸ばすことにも使用できます。ま た、個人設定時に得るCPで《仕掛け》技能をさらに伸ばすこともできます。
ただし、《仕掛け》技能は最低でも1レベル以上にしておかなくてはなりません。