"Hiden no koe" on WWW - Rule Book

はじめに

池波正太郎の三大シリーズの中でも、ひときわの無常感が漂う小説、それが「仕 掛人・藤枝梅安」シリーズです。作者が大好きであったフランスのフィルム・ノ ワールの世界を時代劇で再現したような「江戸の暗黒街」、罪を犯しつつ人助け をする人間の矛盾という重いテーマ、そして池波正太郎の卓越したストーリーテ リングの力で、今でもファンの心をつかんで放さない名作シリーズとなっていま す。

その世界を「秘伝の声」で再現しよう、というのが「殺しの掟」のねらいです。


思えば、「秘伝の声」の第1号の増補版(サプリメント)として作られたの が「殺しの掟」の旧版でした。

「秘伝の声」がその汎用性から「どう遊んでよい のか分かりにくい」ものであったのに対して、増補版第1号としては、 プレイフォーマットを提示した非常に意義の大きい増補版であったと思い ます。その内容も、池波正太郎の「江戸の暗黒街」の再現には必要にして十分な ものでした。

システムデザイナーである富田氏から提示された本増補版を目標にして、それを 超えるべく努力していった結果、それが今の「秘伝の声」の各サプリメントだと いえるでしょう。

しかし、著者の富田氏にしてみれば、時が経つにつれて不満が募ってきたよう です。それは、創作性が強い増補版であるからこそ、池波正太郎ただ一人の世界 にすべてを負っただけでよいのか、という不満であったように私は思います。


そのために本サプリから登場したのが「殺し屋」改め「とがり屋」です。

わたしはプロとしてベストです。
したがって報酬もいちばん高い。

この震えがくるほどカッコイイセリフは、フレデリック・フォーサイスの処女作 にして代表作「ジャッカルの日」に登場します。 このセリフを吐くにふさわしいプロとしての暗殺者、それが「とがり屋」なので す。

「とがり屋」というのは「殺しの掟」新版で作られた新しい用語です。池波正太 郎が「仕掛人」「蔓」といった言葉で「江戸の暗黒街」にリアリティを吹き込ん だように、富田氏も「とがり屋」というカッコイイ言葉を作りました。善悪や正 義とは無縁の、プロとして依頼を完璧に果たす殺人者。PC としてプレイしても いいですし、NPC としてもいろいろ美味しく使えます。

「とがり屋」の登場によって、「殺しの掟」はもちろん、「秘伝の声」にも新し い世界が広がったといえるでしょう。


本書ではそのほかにも、仕掛人・とがり屋それぞれについての仕事の流れ、用語 集、仕掛人らしいプレイを促進するための追加ルールなどを収録しています。 いずれもプレイに今すぐ役に立つ情報ばかりです。 また、シナリオでは仕掛人としての典型的なプレイを提示しています。

ぜひぜひご活用ください。


なお蛇足ですが、本書から組み版を LaTeX2e に移行しました。 角藤さんのpTeX 2.1.8ASCII pLaTeXをもちいて組み版し、 SHIMAさんによるDVIOUT for Windowsで印刷しています。 またエディタは himi さんによる MULE for Windowsを使っています。

これらがすべてフリーソフトウェアであることは非常にすばらしいことだと思い ます。これらソフトウェアが存在しなければ「殺しの掟」はもちろん、これまで の「秘伝の声」プロダクツは何一つ完成しなかったでしょう。開発者の皆様方に ここに感謝の意を表させていただきます。


最後になりましたが、本書が「秘伝の声」の世界に新たな1ページを刻むことを、 そして皆様の「江戸の暗黒街」での活躍をお祈りしまして。

「火盗改メ」組み版・ちゃちゃ入れ担当
兼「秘伝の声」ヱブペェジ管理人

小笠原徳彦

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