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第八章 オススメ文献

この章では、「殺しの掟」をプレイする上で参考になると思われ る文献を紹介します。プレイの前に、プレイヤー全員がこれらの文 献に当たっておけば、プレイもスムーズに進み、セッションはいっ そう盛り上がることでしょう。是非一度手に取ってみて下さい。

仕掛人・藤枝梅安(池波正太郎・講談社文庫)

本書で取り上げる「仕掛人」のモチーフとなっているのがこの作 品です。池波正太郎の三大シリーズの一つとして、またテレビ時代 劇「必殺」シリーズの原作として、あまりにも有名です。

主人公の藤枝梅安は、普段は鍼医者として生活していますが、実 は凄腕の仕掛人です。数人の蔓が彼の仕掛けの腕を頼って依頼を 持ってきます。梅安の受ける仕事は「この世に生きていてはならぬ 奴」だけを仕掛ける本格派のものだけです。

難しい仕掛けを、仕掛人仲間で吹き矢の名手である彦次郎と共に 解決していくのです。

梅安が仕掛人という稼業に手を染めているのは、金のためでも、 正義のためでもありません。ただ人殺しという逃れられないしがら みが、仕掛けへと駆り立てていくのです。それでいて、梅安の鍼は 多くの人を助けます。ここに、「人は良いことをしながら悪いこと をし、悪いことをしながら良いことをする」という著者の考えが表 れています。

後に出てくる、浪人剣客・小杉十五郎との友情や、白子屋半衛門 との確執などが話を盛り上げますが、未完となっているのがあまり にも残念です。

また、本シリーズには別巻として、「梅安料理ごよみ」がありま す。池波氏自らのエッセイで仕掛人について語られているので、 「殺しの掟」をプレイする人は必読といえるでしょう。

殺しの掟(池波正太郎・講談社文庫)

池波正太郎の傑作短編集です。収録されている物語は、すべて江 戸の暗黒街を舞台にしています。仕掛人の原型となる話を中心に、 主人公は皆悪事を働いており、ピカレスクな魅力に満ちた一冊と なっています。

中でもオススメは、本書のタイトルとなっている「殺しの掟」の 一編。池波作品にたびたび登場する、香具師の元締・音羽の半衛門 が登場します。十年前に仕掛けの依頼を受けた相手から、再び依頼 を受けた半衛門。目指す相手を首尾良く仕掛けたが、その後で明ら かになった真実とは……。暗黒街の掟と信念を浮き彫りにする、 必読の一編です。

駆込寺蔭始末(隆慶一郎・光文社時代小説文庫)

「一夢庵風流記」や「影武者徳川家康」で有名な、隆慶一郎の連 作短編シリーズです。

江戸と鎌倉を結ぶ街道沿い、鎌倉にほど近い松岡山にある男子禁 制の尼寺・東慶寺。そこの住持である玉渕尼は、公家出身の純真無 垢な美少女で、京都からこの松岡山に、東慶寺の住持となるべく売 られてきました。

幼い頃から、彼女と共に暮らしてきた主人公の麿は、玉渕尼の純 真で傷つきやすい心を守るため、東慶寺の門前にある煎餅屋に居候 しています。

実は、麿は木曽谷で厳しい修行を積んだ朝廷の隠密「御所忍び」 の棟梁なのです。煎餅屋の夫婦・八兵衛とおかつもまた、木曽谷の 忍びです。

そして、東慶寺に駆け込んできた女達をめぐる醜い争いごとやも めごとで、玉渕尼の手に負えないものを蔭ながら解決していきま す。これを麿達は「蔭始末」と呼んでいます。彼らは手裏剣代わり に五寸釘を用い、相手の急所に打ち込んで絶命させるのです。

仕掛人とはちょっと違う異色の設定が魅力的です。ストーリーも 面白く、一読の価値があります。ゲームに取り入れるのも容易で しょう。

殺し稼業・知切良十内(峰隆一郎・徳間文庫)

気鋭の時代小説作家・峰隆一郎の連作短編シリーズです。

主人公の知切良十内は六十過ぎの年老いた浪人ですが、実は「十 五屋」と呼ばれる暗黒街の暗殺者です。

十五屋というのは、すなわち「殺し」の語呂合わせで、「五・六 ・四」をすべて足し合わせた数字を示しており、暗黒街の隠語で暗 殺者のことをこう呼んでいるのです。

仕事は元締から使いがやってきて、殺す相手を伝えると共に、半 金の二十五両を持ってきます。もう半金は、仕事が成功した後で、 やはり元締の使いが持ってきます。十五屋への使いは大抵同じ人物 で、情報収集などを手伝ってくれます。

本来、十五屋となった者は仕事のハードさから、一、二年で命を 絶たれてしまいます。しかし、十内はもう二十年以上も十五屋とし て活躍しています。

設定は「仕掛人・藤枝梅安」そっくりの作品ですが、十五屋の精 神的な負担や、殺し稼業の極度の緊張感が浮き彫りにされており、 人を殺すことの重さを感じさせてくれます。

処刑人・魔狼次(鳴海丈・徳間文庫)

以前はジュブナイル作品、現在は「修羅介斬魔剣」などの時代小 説で活躍している鳴海丈の連作短編です。

主人公の魔狼次は筋骨たくましい巨漢ですが、容姿に似合わず根 付け職人を生業としています。しかし、それは表の顔。実は江戸の 暗黒街でも有名な処刑人(ころしにん)なのです。彼は殺しに武器 を使わず、相手が武器を持っていようが、どんな手練れであろう が、素手で戦います。魔狼次は、日本最古にして最強の殺人格闘術 ・漢無威流の使い手なのです。

魔狼次は、江戸に三つある処刑人の組織・公羽会に属していま す。殺しの依頼は、四のつく日に、屋形船の船上で行われます。こ れは処刑人たちの会合で、全員が仮面を付けて現れ、やはり仮面を 付けた処刑人の元締・黒翁から殺しの仕事を割り振られます。

柴田練三郎の作品を彷彿とさせる、エンターテイメント性あふれ る設定、テレビ時代劇のような殺陣の描写、菊池秀幸作品を思わせ る伝奇性とエロティシズム。

本格派とは言えないまでも、エンターテイメントとして秀作で す。また、鳴海丈の作品「修羅介斬魔剣」にも、処刑人・魔狼次が 登場します。こちらは忍者の忍法合戦もからみ、山田風太郎のよう な伝奇時代劇の世界が書かれています。

ジャッカルの日(フレデリック=フォーサイス・角川文庫)

史実と虚構を巧みに融合したドキュメントノベルを書く小説家・ フレデリック=フォーサイスの、処女作にして代表作です。

舞台は1970年代、ドゴール大統領政権下のフランス。反ドゴール 派の過激派組織OASは、ドゴール暗殺にことごとく失敗し、組織 も崩壊の危機にさらされていました。

OASの幹部であるマルク・ロダンは一計を案じ、いまだどの国 の警察組織もマークしていない、一匹狼のプロの殺し屋を雇って、 ドゴール暗殺を実行することにしました。

彼によって雇われたのはブロンドの白人で、作戦中のコードネー ムを「ジャッカル」としました。ジャッカルは単独でドゴール暗殺 の準備を着々と進めます。

フランスの警察は、OASの奇妙な動きから、やっとのことでド ゴール大統領暗殺の計画を知ります。ジャッカル逮捕の特命を帯び たのは、フランス警察で一番の腕利き刑事のルベル警視。彼は地道 な捜査活動と卓越した頭脳で、徐々にジャッカルへと迫ります。

ドゴール暗殺へと向けて、魔の手を伸ばすジャッカル、それを阻 止せんと手を打つルベル。緊迫したドラマが展開されていきます。

「殺しの掟」のとがり屋は、この小説のジャッカルをモデルにし ています。プロの殺し屋の慎重さと準備の周到さは、RPGをプレ イする上で参考になること請け合いです。

必殺シリーズ完全百科(山田誠二・データハウス)

あの有名なテレビ時代劇「必殺」シリーズを、余すところなく解 説した資料本です。 著者は必殺シリーズファンクラブとらの会会長で、内容充実の一冊 となっています。必殺シリーズの制作裏話や、逸話、名作・怪作の 紹介など、必殺ファンには堪えられない内容です。

特に、必殺に登場したキャラクターが使用した殺しのスタイル を、すべてイラスト付きで解説しているのには脱帽。また、放映全 話リストや必殺グッズリストは、資料としてだけでなく、これから 必殺シリーズに触れたいという時代劇初心者にも役立つことでしょ う。

「必殺」ファン垂涎の一冊です。

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