同心の生活の息吹 --- 同心部屋御用帳 --- | |
島田一男, 同心部屋御用帳 (一)〜(四), 春陽堂書店 (春陽文庫) |
南北町奉行の同心たちは、いったいどのような生活をしているのでしょうか。それを生き生きと描いているのが、島田一男「同心部屋御用帳」です。 主人公は、南の定町回り同心になってまだ数年、仕事が面白い盛りの千秋城之介です。世情のことから古文までの幅広い教養を持ち、 女師匠のお葉とわりないなかになって、気楽な独身暮らしをしている彼は、よき後輩であり、論語などはそらんじているが下世話な話に疎く、同心とは思えないほどの初(うぶ)な日下兵馬と、女好きには人後に落ちない先輩の由良三九郎、そのほかの同心と、さまざまな事件を解決していきます。 この作品の魅力は、川柳を多用した同心同士の生き生きとした会話にあります。三九郎が川柳を引いて、ちょっと品のない冗談をいう、とすると兵馬が首をひねる。それを城之介が講釈する。そのやり取りが実に面白く、興味深いものです。 江戸の風俗を知るには恰好の作品。ぜひとも読んでみてください。 |